News

【プレスリリース】慶應義塾大学病院にて「赤ちゃんの頭のかたち」セミナーが開催

2025.03.17
株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー(東京都中央区、代表取締役CEO大野秀晃、以下「当社」)は慶應義塾大学病院小児頭蓋顔面(クラニオ)センターおよび小児科が主催する「赤ちゃんの頭のかたちセミナー」を共催し、2025年2月12日(水)に開催しました

近年、赤ちゃんの頭のかたちに対する関心が高まり、特に位置的斜頭症に対するヘルメット治療が広く知られるようになっています。一方、頭蓋骨縫合早期癒合症などの病的な頭蓋変形と位置的斜頭症の鑑別が十分に行われないまま、不適切な治療につながる事例も報告されています。
このような状況を受け、2024年4月に慶應義塾大学病院小児頭蓋顔面(クラニオ)センターでは「赤ちゃんの頭のかたち」に特化した専門外来を開設し、病的な頭蓋骨縫合早期癒合症の診断・治療や、位置的斜頭症に対するヘルメット治療を実施しています。本外来は、患者様の頭蓋変形について適正な診断と治療を提供し、親御様に寄り添った医療サービスの提供を目指しています。
今回のセミナーは、同外来と慶應義塾大学病院小児頭蓋顔面(クラニオ)センターの経験をもとに、医療従事者を対象として開催され、脳神経外科・小児科・形成外科の専門医が登壇し、最新の診断や治療に関する知見を共有しました。会場とオンラインを併用したハイブリッド形式で行われた本セミナーには、平日夜間にもかかわらず120名以上の参加者を迎え、大盛況となりました。
慶應義塾大学病院の「赤ちゃんの頭のかたち外来」は赤ちゃんの頭の形のトリアージ機関であり、医療インフラとして大きな責任を負い、その使命感の下、一人ひとりの患者様と親御様に真剣に向き合っていることが示されました。

セミナー概要
  • 開催日時:2025年2月12日(水)18:30-20:00
  • 開催形式:会場参加+WEB配信(ハイブリッド開催)
  • 主催:慶應義塾大学病院小児頭蓋顔面(クラニオ)センター
       慶應義塾大学病院小児科
  • 共催:株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー
  • 参加者数:120名超
プログラム
座長:鳴海 覚志(小児科)
  1. オープニングとイントロダクション
  2. 頭蓋骨縫合早期癒合症の鑑別とその治療について
    演者:三輪 点(脳神経外科)
  3. 赤ちゃん頭の形の診療:健診での気づきと治療へのアプローチ
    演者:沼澤 佑子(小児科)
  4. ヘルメット治療の原理と効果
    演者:梶田 大樹(形成外科)
  5. ヘルメット治療の日本の現況と当院で行う意義
    演者:坂本 好昭(形成外科)
  6. 赤ちゃんの頭のかたち外来についての説明
    講師:坂本 好昭(形成外科)
「赤ちゃんの頭のかたちセミナー」座長よりコメント 慶應義塾大学病院小児科教授 鳴海覚志先生

【略歴】
2001年 慶應義塾大学医学部 卒業
2001年 慶應義塾大学病院小児科 研修医
2003年 川崎市立川崎病院小児科 専修医
2005年 慶應義塾大学大学院 医学研究科
2009年 慶應義塾大学医学部 小児科学教室 助教
2012年 慶應義塾大学医学部 小児科学教室 特任助教
2016年 国立成育医療研究センター研究所分子内分泌研究部 室長
2023年 慶應義塾大学医学部 小児科学教室 教授

【認定資格・所属学会】
日本小児科学会認定小児科専門医
日本小児科学会認定小児科指導医
臨床遺伝専門医
日本小児科学会 学術委員会委員
日本小児科学会 代議員
日本人類遺伝学会 評議員
日本人類遺伝学会 将来構想委員会委員
日本小児内分泌学会 理事
日本小児内分泌学会 評議員
日本小児内分泌学会 Clinical Pediatric Endocrinology編集委員
日本小児内分泌学会 あり方委員会委員
日本内分泌学会 評議員
日本内分泌学会 Endocrine Journal編集委員
日本甲状腺学会 評議員
日本甲状腺学会 小児甲状腺委員会委員

このたび、慶應義塾大学病院 小児頭蓋顔面(クラニオ)センターは、初めてとなる「赤ちゃんの頭のかたちセミナー」を開催しました。本セミナーでは、脳神経外科・形成外科・小児科の3つの診療科が連携し、乳児の頭のかたちに関する医学的課題にチームで取り組んでいることを紹介しました。乳児の成長や発達の特性を踏まえると、3〜4か月健診が特に重要なタイミングであるという認識が共有されました。
また、頭蓋形状の異常には一定の頻度で頭蓋骨縫合早期癒合症が含まれるため、適切な評価が欠かせません。本セミナーでは、頭蓋矯正治療を含む診療アプローチを医学的・医療的な観点からご紹介し、ご家族とともに最適な選択を考えることの大切さをお伝えできたと思います。
「赤ちゃんの頭のかたちセミナー」演者よりコメント 慶應義塾大学病院脳神経外科 三輪点先生

【略歴】
2001年 広島大学医学部卒業
2001年 慶應義塾大学病院外科 研修医
2002年 平塚市民病院脳神経外科
2003年 国立病院東京医療センター脳神経外科
2004年 慶應義塾大学医学部脳神経外科 助手
2005年 慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程入学
2005年 東京慈恵会医科大学脳神経外科
2006年 慶應義塾大学病院救急科
2009年 慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了
2009年 東京慈恵会医科大学小児脳神経外科 助教
2011年 足利赤十字病院脳神経外科
2013年 慶應義塾大学医学部脳神経外科 助教
2017年 慶應義塾大学医学部脳神経外科 専任講師

【認定資格・所属学会】
日本脳神経外科学会専門医
日本小児神経外科学会認定医・評議員
日本神経内視鏡学会技術認定医・評議員
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本脳卒中学会専門医

頭蓋骨縫合早期癒合症の鑑別とその治療について、講演させていただきました。赤ちゃんの頭のかたちの異常は、頭蓋骨縫合早期癒合と向き癖の2種類があり、頭蓋骨縫合早期癒合症にヘルメット治療はしてはいけないこと、頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は1歳までに行うことが望ましいこと、できるだけ早期に頭蓋骨縫合早期癒合症と向き癖の鑑別をする必要があることをお話しいたしました。またその確定診断にはX線もしくはCT検査が必要である旨説明をさせていただきました。
残念ながら全国的にも頭蓋骨縫合早期癒合症にヘルメット治療をしてしまったり、見逃したり、という例が見られます。頭蓋変形=ヘルメット治療、というわけではないので、まずは正しい診断をしっかりした上でのヘルメット治療の普及を願っています。
慶應義塾大学病院小児科 沼澤佑子先生

【略歴】
佐賀大学医学部医学科 卒業
慶應義塾大学病院小児科 研修医
大和市立病院 小児科
慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程
慶應義塾大学医学部小児科学教室 助教
あしかがの森足利病院 神経小児科
慶應義塾大学医学部小児科学教室 助教

【認定資格・所属学会】
日本小児科学会認定小児科専門医
日本小児神経学会認定小児神経専門医
日本人類遺伝学会
日本てんかん学会

「赤ちゃん頭の形の診療 – 健診での気づきと治療へのアプローチ」では、赤ちゃんの頭の成長や位置的頭蓋変形の歴史、リスク因子、病態、重症度判定、治療の選択肢について概説し、新生児期からの具体的な診療アプローチを紹介しました。診療現場では、「頭の形が気になるが、どう対応すべきか」「治療が必要なのか」と悩む家族が少なくありません。その背景には孤独な育児や初めての育児に対する不安を抱える家庭もあります。
診療には医学的知識だけでなく、家族の心理的負担への配慮も不可欠です。すべての赤ちゃんとそのご家族が、適切な医療を受け、安心して育児に向き合える環境が整うことを願っています。
慶應義塾大学病院形成外科 梶田大樹先生

【略歴】
2011年 慶應義塾大学医学部卒業
2013年 慶應義塾大学医学部形成外科学助教
2017年 慶應義塾大学医学部形成外科学特任助教
2021年 0歳からの頭のかたちクリニック入職(非常勤)
2023年 0歳からの頭のかたちクリニック常勤医師
2024年 0歳からの頭のかたちクリニック東京日本橋院長

【認定資格・所属学会】
日本形成外科学会認定形成外科専門医

今回のセミナーでは、ヘルメット治療の現状と当院での取り組みについてご紹介しました。近年、日本でもヘルメット治療の選択肢が広がり、多くの保護者の方々が関心を寄せていますが、その適用や治療効果については、医療従事者間でも認識の統一が必要と感じています。
ヘルメット治療は、非侵襲的に頭蓋形状を改善できる一方で、適応の見極めが重要であり、特に頭蓋縫合早期癒合症を見逃さないことが求められます。また治療開始時期や矯正の効果について、保護者の不安を解消しながら正確に情報提供することが不可欠です。本セミナーが、乳児の頭蓋形状異常への理解を深める機会になったことを嬉しく思います。
慶應義塾大学病院形成外科 坂本好昭先生

【略歴】
2005年 慶應義塾大学医学部卒業 
2007年 慶應義塾大学医学部 形成外科教室入局
2008年 都立清瀬小児病院 小児外科 医員
2009年 慶應義塾大学病院 形成外科 後期臨床研修医
2010年 独立行政法人国立病院機構東京医療センター 形成外科 常勤医
2011年 慶應義塾大学医学部 形成外科学教室 助教
2013年 フランス ネッカー小児病院 留学
2016年 慶應義塾大学医学部 形成外科学教室 専任講師

【認定資格・所属学会】
日本形成外科学会専門医
日本頭蓋顎顔面外科学会専門医
日本皮膚腫瘍外科専門医
小児形成性外科分野指導医
日本頭蓋顎顔面外科学会 代議員
クラニオシノストーシス研究会 世話人
International Society of Craniofacial Surgery, Active Member
Asian Pacific Craniofacial Association, Active Member
European Association for Plastic Surgeons, Corresponding Member
American Association of Plastic Surgeons, Active Member

「赤ちゃん頭の形–日本の現状」では、赤ちゃんの頭の形に対してヘルメット治療を行う施設の急速な増加により、ビジネス目的が目立ちはじめ、頭蓋縫合早期癒合症の診断も不確実な現状に警笛をならすとともに、なぜ頭蓋縫合早期癒合症の治療をメインで行ってきた当院がヘルメット治療を開始するに至ったかについて紹介しました。そして当院の小児頭蓋顔面センターが開設当初からかがける「赤ちゃんの頭の形のトリアージ機関」としての使命を共有いたしました。適切な診断と治療を行い、ご紹介いただく先生方にとっても安心なセンターであり続けることで、これからも健やかな赤ちゃんの成長に寄り添ってまいります。


本セミナーでは、「赤ちゃんの頭のかたち」についての適正な診断・治療の重要性があらためて議論されました。特に、頭蓋骨縫合早期癒合症と位置的斜頭症の鑑別診断の難しさ、ヘルメット治療における適応の適正化、医療機関同士の連携の重要性が強調されました。
参加者からの質疑応答では、診断基準の明確化やヘルメット治療の予後などについて活発な意見交換が行われ、今後の診療体制の強化に向けた貴重な機会となりました。
今後も当社は医療機関と連携しながら、適正な頭蓋健診と適正なヘルメット治療という概念そのものと、疾病啓発の普及に取り組んでまいります。